前立腺がんの症状・検査・治療について解説します
●前立腺とは
男性の膀胱の下に位置し、尿道を取り巻いており、直腸の腹側に位置します。正常の大きさはクルミ大です。(図1)
●前立腺肥大症とは
加齢による男性ホルモン低下等から前立腺自体が腫大し、取り巻いている尿道を圧迫して、排尿困難等の症状が発生します。
●前立腺肥大症の症状
・夜間頻尿 ・排尿困難
・尿勢低下 ・残尿感等
●前立腺がんとは
前立腺の一部が癌化し、増殖します。
2019年の男性部位別がん罹患率では、前立腺がんが第1位で、近年も増加傾向です。原因は食生活の欧米化、高齢化、ホルモンバランス、検診普及、診断技術の進歩が考えられます。
●前立腺がんの症状
腫瘍の部位、大きさによって、前立腺肥大症と同じような排尿症状が出現する場合がありますが、無症状の場合もあります。
●前立腺肥大症と前立腺がんの関係
前立腺肥大症になると前立腺がんになりやすいわけではありません。また前立腺肥大症と前立腺がんと合併する事があります。よって排尿症状の有無による前立腺肥大症と前立腺がんの区別はできません。
●前立腺がん発見に必要な検査は?
検診でも導入されているPSA採血(正常4.0以下)。排尿症状の有無に関係なく、50歳以上の方は一度PSA採血を勧めます。また前立腺がんは遺伝しませんが、血縁者(父親、兄弟)に前立腺がんがいる場合リスクが増すので、特にPSA採血を勧めます。ただしPSA高値なら癌とは限りません。前立腺肥大症、前立腺炎でもPSAが高値となるため、グレイゾーンとされるPSA4.0〜10.0の場合、癌陽性率25~40%とされます。よって泌尿器科受診が必要です。
●泌尿器科での検査
前立腺MRIを撮影し、異常所見が確認された場合は前立腺針生検が必要です。異常所見が確認されない場合は経過観察となる場合もあります。
●従来の前立腺針生検
経直腸エコーを直腸内に挿入し、前立腺を観察しながら、エコーガイド下に12〜16カ所に生検針を穿刺し組織を採取します。前立腺MRIで確認された異常部位が検査中のエコーで同定困難な場合、異常部位が小領域の場合、採取困難な穿刺ルートの場合は、確実に異常部位を穿刺、組織採取できない可能性があります。確実な組織採取ができないと、がんの診断が得られない(見逃し)、後日再度前立腺針生検が必要、早期発見が遅れるといった可能性があります。
●当院で導入した前立腺針生検システム機器(BioJet)
事前に撮影したMRI画像と検査中エコーを同期・融合させて、前立腺MRIで確認された異常部位を正確に穿刺することが可能な装置です。この装置により従来の前立腺針生検よりも確実に穿刺組織採取が可能となりました。(図2・3・4)
当院で前立腺針生検システム機器(BioJet)を使用した前立腺針生検を開始して約3か月が経過しましたが、正確に狙った異常部位への穿刺が可能で、異常部位からの前立腺がん検出率が明らかに増加している事を実感しています。結果、患者さんには1回の前立腺針生検で確実で信頼度の高い生検結果を提示できています。
●ロボット前立腺手術
当院ではダヴィンチXi(図5)を導入しており、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を開始しております。低侵襲なため、手術翌日から飲水、食事、歩行を開始しており、平均入院期間は10日間です。