病院コラム

2025年10月17日

形成外科について詳しくご紹介します



2024年12月より当院で形成外科の診療を開始しました。形成外科の歴史は浅く、こと岐阜県の形成外科医数は全国ワーストに近いため、どんな病気を治療しているのかわからないかも知れません。形成外科とは、からだに生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは外見上の不満足に対しあらゆる手法や特殊な技術を駆使して、機能のみならず見た目にもより正常に、さらにはより美しくすることによって、生活の質の向上に貢献する外科系の専門領域です。具体的には以下の病気の手術的治療を主に行っています。

体表のケガ・やけど、顔の骨折、眼瞼下垂、唇裂、見た目の先天異常(漏斗胸、立ち耳、でべそなど)、リンパ浮腫、皮膚腫瘍(ホクロやイボなど)、乳癌術後の乳房再建、アザ、血管腫、傷跡(含ケロイド)、床ずれ、巻き爪、ワキガ、顔面神経麻痺など

特定の臓器を対象とせず、 原因や場所はなんであれとにかく見た目の異常に対する治療を行っていると言っても良いでしょう。そして本来は美しさを追求した先が美容形成になります。慣習的に美容整形と言われているため誤解が生じがちですが本来は形成外科の重要な一領域です。当院におきましては健康保険の範囲での診療を旨としていますので当面は美容形成の診療は行いません。その一方で眼瞼下垂症など年と思って諦めていた状態やホクロやイボなどのできものが、保険診療で治療が可能な場合もあります。まずは当科にご相談ください。
今回は見過ごされることが多い眼瞼下垂症について少し解説します。

眼瞼下垂症について
眼瞼下垂とはまぶたが下がっていたり、開けづらくなったりする状態です。片方にだけおこることもありますし、両方におこることもあります。年をとって下がってきた場合には年だからしょうがないと思われていることも多いですが、形成外科においては「眼瞼下垂症」といい、保険診療で治療ができることもある病気です。

瞼をあげる仕組み
まぶたを直接あげる筋肉としては上眼瞼挙筋とミューラー筋があります。眼瞼挙筋は腱膜を介して、ミューラー筋は直接、まぶたの縁にある瞼板というやや硬い板のような組織につながっています。これを持ち上げることによってまぶたをあげるのです(図1)。

眼瞼下垂症の原因
まぶたをあげる仕組みのどこかに異常があるのが原因となります。加齢と共に徐々に発症する眼瞼下垂症は腱膜が伸びてしまったり瞼板から外れてしまったりした場合や、皮膚がたるんでしまった場合に起こることが多いです(図2)。

眼瞼下垂症の症状
見えにくくなるのはもちろんですが、なんとか見えやすくなるように努力することが思わぬ副作用を引き起こします。無意識のうちに眉毛をあげて瞼をあげようとするために額の筋肉である前頭筋を使うことがあります。この筋肉を使い続けると頭痛が起こることがあります。そして首を後ろにそらして顎をあげることによって、瞼がかからない下の方の視野を使おうとすることがあります。すると頭の後ろ、首筋、肩の筋肉を使い続けることになりこれも頭痛や肩凝りの原因になることがあります。また腱膜がたるんだタイプの眼瞼下垂症ではミューラー筋ががんばります。ミューラー筋は交感神経によって動く筋肉なので、ミューラー筋ががんばるためには奥歯を常に噛みしめるなどして常に交感神経を興奮させる状態になります。これが「交感神経刺激症状」といわれるめまい・うつ・不安・便秘・冷え性・不眠・慢性疲労など様々な症状を引き起こす可能性があるとも言われています。さらに見た目の症状としては下がったまぶたにより眠そうな目元になります。また額に力が入るので額にしわが増えて老け顔に見えたり、眉毛がつり上がるので目との間が間延びしたりする印象になります。

眼瞼下垂症の診断
まぶたは年齢とともに多少下がってくる人が多いので、成人の眼瞼下垂は必ずしも病気とは限りません。しかしそれによって視界が狭くなったり、目が疲れやすくなったり、肩凝りや頭痛が起こっている場合には治療が必要かもしれません。リラックスした状態で正面を見た時に黒目の中心からまぶたの縁まで2㎜以上近づいていれば眼瞼下垂症の疑いがあります。正確な診断は当科外来でご相談ください。

眼瞼下垂症手術の方法
眼瞼下垂症にはいくつ手術法がありますが、当院においては主に次の2種類の手術を使い分けています。皮膚のたるみが主な原因と考えられる場合には余っている皮膚を切除する眼瞼皮膚切除術を行います。腱膜のたるみが主な原因と考えられる場合にはたるんでしまった腱膜を瞼板に再固定する挙筋前転法を行います(図3)。



 

 

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