耳鼻咽喉科・頭頸部外科について詳しくご紹介します
令和5年10月開院以来一年があっという間に過ぎました。常勤専門医二名、うち指導医一名、非常勤専門医二名の診療体制になりました。外来のみならず入院手術治療も積極的に行っています。手術治療の対象疾患は慢性扁桃炎、アデノイド増殖症、滲出性中耳炎、慢性化膿性中耳炎、真珠腫性中耳炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎、喉頭ポリープ、頭頸部領域の腫瘍例えば耳下腺腫瘍顎下腺唾石症や正中頸嚢胞・側頸嚢胞などの頸嚢、甲状腺腫瘍などほぼすべての領域です。めまいを伴う突発性難聴や糖尿病を伴う顔面神経麻痺、救急車で搬送されためまい患者さん、顔面外傷、難治性鼻出血の患者さんなどは入院治療の対象になります。また睡眠時無呼吸などがある患者さんには簡易の自宅での睡眠検査や入院での精密検査を行いN–CPAP治療への導入も行っています。スギ花粉症や通年性のダニに対する舌下免疫療法も行っていますのでご相談いただければと思います。
頭頸部外科診療の柱にはがん診療があります。岐阜大学での頭頸部癌の集学的治療後の患者さんのフォローアップ外来として岐阜大学の教授、准教授が各々月1回の割合で診療を完全予約制で行っております。当院では頭頸部癌の早期診断に力を入れています。組織の検体採取、病理診断、全身的なCT・MRI・PET–CTなどの画像検索は他院に比べより早く対応することができます。頭頸部領域のがん患者さんはほかの胃がん大腸がんなどの五大がんに比べその発生頻度は低いですが、重複がんが多いという特徴があり、飲む食べる喋るなど人間の根幹的機能に係る重大な部位ですので早期発見が機能温存につながり何にも優ります。
●耳鼻科領域の最近の話題
近年は嗅覚障害や難聴が認知症の初期症状やリスク因子として注目されています。現在の医療では認知症を治せる薬剤はまだ残念ながらありません。現状では認知症になるリスクを少しでも下げることが現実的な対策となります。嗅覚障害が軽度認知障害発症のかなり前から症状として出ることが知られてきて認知症の予防や早期発見につながるという報告もされています。嗅上皮は感覚器の中でも再生の可能性がある珍しい感覚器です。新型コロナ肺炎の後遺症で話題になりましたが、インフルエンザや通常の感冒でも嗅覚障害が起きることは知られていました。嗅覚障害についての治療もある程度は確立されており、障害のある患者さんには原因を精査し、治療を行っています。
また以前は老いの象徴でもあった補聴器が近年はスタイリッシュなものや調節がスマートフォンと連動できるものまでソフトやハードでの進化が著しいです。耳鼻咽喉科学会ではフレイルという虚弱に陥らないようにする目的でささやき声が聞こえる30dB程度の聴力を80歳で維持する「聞こえ8030運動」を提言しています。加齢による難聴はまだ現代の医療でも治せない症状の一つです。その難聴には補聴器の装用が欠かせません。視力障害は自身が困るので比較的早く眼科に受診されますが、難聴は本人よりも周りが困ることが多く、当の本人はあまり気にならない障害とも言えます。難聴のため会話するのに億劫になりひいては社会的孤立を深めそれらのカスケードが認知症のリスクになるとされています。聞こえづらいと思ったら早めに耳鼻科に受診してください。補聴器の装用は眼鏡と違って、慣れやそのフィッティング、調整に時間がかかり、認定補聴器技能者がそのお手伝いをします。補聴器をうまく活用して外に出ていくのも認知症予防にも重要です。当院の補聴器相談医にご相談ください。
またデジタル機器の普及が著しく若者の間ではイヤホン難聴が増えているという報告もあります。装用時間の制限や耳を休める時間を設けるなどの工夫が必要です。聞きづらいと思ったら早めに耳鼻科に受診してください。