男性更年期外来について詳しくご紹介します
男性にも、閉経前後の女性と同様な更年期症状・障害が発症しうる事をご存じでしょうか?
日本人女性の平均閉経年齢は50歳ですが、その前後で女性ホルモンであるエストロゲンが大きくゆらぎながら低下することによって、様々な更年期症状、障害が発症します。
40歳以上の男性においても、加齢に伴い男性ホルモンであるテストステロン濃度が低下し更年期症状・障害が発症する事があります。これをLOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)といいます。
男性は主に心理的、身体的、性機能に悪影響します。(図1)
心理面では、いらいら、神経質、不安感、憂鬱、気分の落ち込み等です。
身体面では、体調がよくない、体力低下、関節痛や筋肉痛、筋力低下、発汗過多・のぼせ・ほてり、不眠、倦怠感、つかれやすい、行動力低下、ひげの伸びが遅い等です。
性機能面では、性欲低下、勃起力低下等です。
心当たりのある男性は図2のAMSアンケートを自己採点してみましょう。特に重症度判定で中等度以上の男性は、当院の男性更年期外来の受診を勧めます。
〈テストステロンの役割〉
テストステロンは20-30歳代にピークを迎え、加齢とともに緩やかに減少しますが、個体差が大きいとされます。ちなみに女性にもテストステロンが分泌されていて、必要不可欠なホルモンですが、その濃度は男性の1/10程で、その変動の影響は少ないと言われています。テストステロンの主な役割は、図3のように多岐にわたり、重要なホルモンです。
●加齢以外にテストステロンが低下する疾患
ストレス、主なテストステロン産生部位である精巣の障害、末期腎不全、中枢性ホルモン異常、ステロイド、アルコール、栄養障害、過剰な運動、高度肥満、2型糖尿病、睡眠障害
●テストステロンが低下するとどうなる?(図4)
男性更年期症状以外に、糖尿病発症・悪化(糖代謝異常、インスリン抵抗性上昇)、脂質代謝異常、高血圧、心疾患、動脈硬化、肥満、メタボ、フレイルサルコペニア(高齢者の筋力低下、身体活動量低下)、骨粗鬆症
●LOH症候群の診断
身体所見、エコー、テストステロンが低下する疾患の鑑別、一般採血、メタボ・糖尿病に関する採血、テストステロンを含めた各種中枢性ホルモン採血、アンケート重症度等から、総合的に判断
〈テストステロン補充療法〉
男性ホルモン注射製剤を2-4週ごとに筋肉注射します。欠点はテストステロンの体内濃度が一定しないこと、痛みを伴う事、2-4週ごとに通院する必要があります。現在全国的に供給不足により投与できません。市販のクリームあるいは当科から5%テストステロン皮膚外用剤(自費)の処方が可能ですので、前述の欠点をカバーできます。当科は日本メンズヘルス医学会のテストステロン治療認定医が在籍しています。治療は3か月間継続し評価します。その後の継続に関しては相談しています。
〈テストステロン補充療法の効果〉
前述のAMSスコア(図2)が中等度以上の治療効果は良好と報告されています。筋肉量増加、体脂肪量の減少、2型糖尿病の血糖コントロール、メタボ、勃起能、主観的健康感(QOL)の改善等です。うつ病と男性更年期障害の症状は一部重なる場合もあり、テストステロン補充療法で効果が得られなかった場合には、当院精神科と連携しています。
●テストステロン補充療法が不可な方、副作用
PSA高値(前立腺がんマーカー)、前立腺がん、高度前立腺肥大症、睡眠時無呼吸症候群、多血症、肝機能障害、挙児希望、男性乳がん、悪性腫瘍骨転移等